交通事故の過失割合等を争う際に証拠となる刑事記録
刑事記録の有用性
交通事故事件において,刑事記録は非常に重要な証拠となることがあります。
刑事記録には,事故状況,当事者の発言内容等が含まれます。
刑事記録は,交通事故と利害関係のない警察官,検察官等が作成するものであり,原則として信頼できるものとして扱われています。
そのため,刑事記録にどのような記載がされているかによって,過失割合などが大きく変わってしまうこともあります。
刑事記録の種類
刑事記録には,大きく分けて起訴記録と不起訴記録に分かれます。
起訴記録は,おおまかにいえば,その交通事故事件について加害者が起訴され,刑事裁判が行われている場合の記録をいいます。
不起訴記録は,おおまかにいえば,その交通事故事件について,加害者が不起訴処分とされている場合の記録をいいます。
不起訴記録は原則として閲覧・謄写できませんが,起訴記録は閲覧・謄写することができます。
不起訴記録のうち,実況見分調書などは,閲覧・謄写が認められる傾向にありますが,供述調書などは,閲覧・謄写が認められない傾向にあります。
刑事記録の閲覧・謄写手続
刑事記録を閲覧・謄写するためには,通常,閲覧・謄写の申請をする必要があります。
閲覧・謄写の申請は,通常,検察庁に対して行います。
例外的に加害者が少年である交通事故事件の場合には,家庭裁判所に対して行うことがあります。
検察庁に対して閲覧・謄写の申請をする場合,注意する点として,地方検察庁と区検察庁のいずれに対して行うべきか,が挙げられます。
予め確認しておくとスムーズに手続が進むと思われます。
閲覧・謄写は自分でもできますが,特定の業者に依頼することができる場合もあります。
刑事記録の開示範囲
刑事記録はすべてが開示されるわけではなく,一部しか原則として開示されません。
刑事事件が不起訴となっている場合(いわゆる刑事裁判になっていない場合),実況見分調書程度しか開示されません。
これに対し,起訴されている場合(いわゆる刑事裁判になっている場合),実況見分調書だけでなく,刑事裁判に提出された記録が原則として開示されます。
ただ,いずれも刑事記録の全てではなく,一部であることには注意が必要です。
閲覧と謄写の範囲
刑事記録を交渉,裁判等で使用したいと考えた場合,閲覧・謄写の許可を受けて刑事記録を取得します。
これもあまり知られていないことかもしれませんが,閲覧可能な記録の範囲と謄写可能な範囲は異なります。
多くの場合は,閲覧可能な範囲の記録があれば十分に足りますが,謄写可能な範囲の記録では足りないという場合には,記録の閲覧を直接してみることも有益です。
謄写はできないので,あくまでも記録を閲覧してメモをするところまでしかできませんが,メモの取り方を工夫することで裁判等でも十分に利用可能にできると思います。
このことを知っていると,対応の幅が広がります。